リストの超絶技巧練習曲
以前、ショパンのエチュードの話をしましたが、今回はショパンのライバル?であるフランツ・リストのエチュードについて、思うところを書いてみたいと思います。
私が好きなリストのピアノ曲に、超絶技巧練習曲があります。
名前がおどろおどろしいこの曲集は、その名の通りピアノ演奏の最難曲であり、過去から有名なピアニストはほとんどレコードを出していないほどのことでした。
ショパンのエチュードに比べてあまり人気がない、という理由もあるかもしれませんが、曲が難しすぎてまともに全曲弾き切れる人が少ないことも、その理由かもしれません。
この曲集は全部で12曲で構成され、その中で有名な曲は、第4曲の「マゼッパ」、第5曲の「鬼火」あたりでしょうか。
ショパンほどの有名曲はないものの、リスト特有の抒情性が随所に見られ、独特の世界を繰り広げています。
私は、中でも第5曲の「鬼火」、第10番(表題なし)がお気に入りです。
第5番は「鬼火」という表題がついているように、揺らめく炎を半音階的にイメージした曲ですが、日本では幽霊とともに現れる「火の玉」もこの名称のようです。
揺らめく炎の持つ妖しさ、時より火の粉が舞っているような表現もあり、印象派音楽を彷彿とさせるリスト独自の世界といえましょう。
また、第10番はリストらしい堂々とした部分と繊細な部分が見事に調和した、それこそ隠れた名曲ともいえる曲だと思います。
このような曲集は、やはり完璧な技巧の中で抒情味豊かな演奏をするピアニストがいいと思いますが、その代表格であるマウリツィオ・ポリーニは、ショパンのエチュードは録音していますが、リストのそれは技巧に走るレッテルを嫌ったのか、この曲の録音はいていないようです。
一度ポリーニの全曲演奏を聞いてみたいと思いましたが、先日、YouTubeで第10番のライブ演奏を発見しました。
ポリーニ64歳頃の演奏ですが、その印象は弾き急いでいる感じで、ショパンのエチュードを録音した時期(30歳頃)の完璧さが感じられませんでした。
ちなみに、私が好んで聞いているCDは、リストピアノ曲全集を録音した、レスリー・ワードが演奏しているもので、ポリーニほどの完璧性はないものの、抒情味豊かで大変気に入っています。